文教大学広報マーケティング室の広報プランナーが毎回、キャンパスの研究室等を訪ね、そこの教職員の専門分野や研究テーマを伺いながら、その方の人柄を中心に紹介します。またその名の通り物々交換もします。


by bunkyo_warashibe
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NO.013 国際学部 藤井美文教授【環境問題のシステム分析・意思決定・国際協力】

6号館の藤井美文先生の研究室に入ると、向かって左側に、理工学関係や経済学などの書籍がびっしり並んでいます。向かって右側には、天井まで3メートルもあろうかという書庫があり、おびただしい量の報告書や様々な環境関連の審議会のファイルが詰まっています(写真下)。そうしたファイルの前には、これまでのゼミ生との集合写真や卒業時にもらったと思われる色紙がたくさん置いてありました。後に出てくるお宝紹介では、「この書架全体をお宝として紹介しようと思った」という藤井先生。さて、どんなお話が聞けるのでしょうか。


c0223443_1116577.jpg 藤井 美文 教授
 (ふじい よしふみ)


【所属】 国際学部 国際理解学科

【専門領域】 環境経済学・
         システム分析・
         国際協力




◎課題解決型テーマを対象に

017.gif まず、専門分野について教えてください。

「私は純粋にアカデミックな領域で活動してきませんでしたので、社会や政策との接点、地域や行政との接点に関わり、issue oriented(課題解決型の)なテーマを対象にしてきました。したがって専門分野を一言でいうのは難しいのですが、現在は次の3本柱と言っています。

第1に環境経済学および環境問題に関するシステム分析の分野です。ごみのリサイクルの新しい制度としてのゴミの有料化や地球温暖化の炭素税、エネルギーと経済のシステム分析などを研究してきました。

第2に、環境問題に関する意思決定についての問題です。環境問題をやっていると、意思決定の問題に行きつくことが多いと昔から感じており、近年では環境問題を契機とした住民参加、迷惑施設をめぐる社会の決定といったテーマです。

第3は、廃棄物問題解決のための国際協力です。途上国でも、日本と同じようなゴミ問題を抱えており、日本の経験を生かして、そうした問題の解決に多少なりとも関わるプロジェクトに関与してきました。」



003.gif どういう経緯でこのような広い領域に関わることになったのでしょうか。

「もともと理工学部出身の技術屋です。大学では、機械工学のうち、燃焼工学というボイラーなどの外燃機関や炎の研究を工学的視点から勉強する先生についていました。当時1970年代前半は、公害の問題が最も激しく社会問題化していた時期でしたので、その研究をされている先生の研究室を選択しました。卒論は、窒素酸化物の生成のメカニズムに関する研究でした。公害のことを勉強するのが面白かったので、大学卒業後は、技術屋になるよりは、社会科学にも関心があったので、外資系の公害防止機器の商社に2年ほどいて、様々な工場に行って輸入機械を売っていました。

その後、本格的に燃焼工学を研究しようと思い大学院に戻りました。しかし、大学時代から、技術者の役割とか、科学技術と社会との関係に関心があったので、指導教官の小泉睦男先生の勧めもあり、日本の窒素酸化物の環境対策、特に政策や技術開発が、短期間のうちになぜ成果を生んだのかを技術的側面から研究しました。

公害の政策を考える場合、技術だけでなく、社会全体のことを知らないといけないので、当時は他大学の大学院も含めて、経済政策や経営学など3つのゼミに参加していました。修士論文では、窒素酸化物の技術史とか、政策史などをまとめるなかで、技術開発と社会の関係をシステム分析※の方法を用いてまとめました。学ぶ範囲も広かったので、このときは必死になって勉強しました。でもそこでやったことがライフワークとなってずっと生きています。つまり、当時の日本経済は公害対策を一生懸命やったことが、その後のオイルショックで省エネルギーにつながり、世界的にも優位な状況に結びつくといった社会のダイナミズムを作り上げたわけで、今でも、そこで起こったこととか、そこで行われた政策が議論されており、そういう意味で、小泉先生との出会いがすごく大きかったですね。」


034.gif ※システム分析:意思決定に際し、ある方針を選択するために、目的を体系的に調べ、目的達成のためのいくつかの代替案を作成してそれぞれ費用、効果などを定量的に検討し、最適案を選択する探究方法。



005.gif 小泉先生との出会いが、その後の藤井先生の進路に多大な影響を与えたと? 

「そうです。小泉先生は、大変優秀な工学者で、当時、窒素酸化物の技術開発政策にも関わっておられました。先生は毎朝歩いて、学校に来られるのですが、毎日1個、仮説をたてるんですね。そのほとんどは棄却されてしまうんですが、いくつかは活きてくるので、『毎日散歩をしながら仮説を作るのは、楽しい仕事だよ』とおっしゃるんですね。『へえー、こんな人が世の中にいるんだ』と思いました。先生は経済学も独学で学んでおられ、なぜ日本はなんでも国産にしてしまうのかなど、当時の貿易摩擦問題を工学のみならず広く社会・経済との関連で論じておられました。そして私に、工学部で社会科学のようなテーマを与え、後援してくださった。この出会いは、私にとって本当に大きなものでした。」


017.gif 大学院を修了された後はどうされたのですか。

「院卒業後、就職できると思っていた調査研究機関に振られてしまったので、大学時代に参加していた『技術と人間』とか『技術と社会』を勉強している東京大学の大学院の人たちを中心としたグループの人に呼ばれたこともあり、ゴミ問題のコンサルタント会社に2年ほどいました。ここでは、東京都武蔵野市の住民によるゴミ焼却場の計画づくりに関わりました。武蔵野市の住民は、市が決めたゴミ焼却場をひっくり変えしたんですね。ひっくり返しただけじゃなくて、8つの地域の自治体からなる委員会を作って、新たに建てる場所を決めたんですね。その計画づくりのお手伝いをしていました。しょっちゅう徹夜しましたが、楽しかったです。

そうこうしているうちに、昔、アルバイトしていた未来工学研究所というシンクタンクに呼んでもらったので、政府のエネルギー計画や環境問題、電気通信政策などを調査・研究していました。その後、アカデミックな電力中央研究所に移り、7年ほどエネルギー分析の領域の、特に需要サイドの研究をしていました。需要サイドの研究とは、エネルギーの価格や規制に対する、個人の行動ですね。一番の思い出は、アメリカの経済学のジャーナルでも掲載されたのですが、『電力の品質と価格』の分析でした。ここでいう電力の品質とは、停電のことです。停電といってもいろいろな種類があるのですが、『瞬停』といって、雷の影響で、人にはわからない0.02秒ぐらい瞬間的に停電することがあるんです。蛍光灯では気づかないのですが、パソコンの電源は落ちるんですね。こうした電気の品質について、瞬停があってもかまわないというユーザーには安く提供するなど、品質別に異なる料金で電気を供給する仕組みができないかを研究したわけです。

未来工学研究所では、原子力産業をまとめた調査結果を、OECDの専門部会で日本の代表として発表する機会を与えられたり、電気通信の技術政策に関する調査が本になったりしたこともあり、大学へのお誘いを受けました。学際的な学部として、『科学技術を文化として位置付ける』コンセプトを国際学部の中に作る構想があった文教大学に移ることになったんです。私は、当時4人いた技術と文化の領域の教員として、技術経済学を担当していました。」



◎大学はもっと地域社会で大きな役割を

c0223443_11333122.jpg027.gif 2番目の「環境問題と意思決定の仕組み」はどういうことをいっているのでしょうか。

「行政には、多くの人の意見を効率的に集められないかというニーズがあります。このため、近年は、国際学部の山田修嗣先生と一緒に茅ヶ崎市、茅ヶ崎青年会議所と共催で4年ぐらい、プラーヌンクス・ツェレ(直訳すると『計画細胞』と訳される)というドイツの市民参加の手法を取り入れた日本版『市民討議会』に関わってきました。これは、環境問題に限らず、4つテーマを決めて、市民の中からランダムサンプリングで30~40人を選んで、5人ずつぐらいにグループに分かれて、いろんなことを問題提起して2日間議論をするものです。市の抱える問題について、普通はあまり参加しないサイレント・マジョリティーの意見を取り入れて、市の意思決定に生かすことを目的としています。すでに5回実施しました。現在では、文教大学大学院国際協力学研究科の院生もこの市民討議会に積極的に関わってくれています。」

034.gif 市民討議会は、新たな市民参加の手法の1つとして行政と大学と商工会議所(青年商工会議所)の3者が一緒になって行っています。市民討議会は、他にも事例がありますが、茅ヶ崎市のように大学が中心になって積極的に取り組んでいるところは全国的にも珍しいそうです。藤井先生は、大学は多くの専門家を有しているので、もっと地域社会でその役割を果たしていかなければならないと熱く語っていました。


◎福島原発事故のあとに問われるエネルギーと意思決定

009.gif 原発事故のあと、卒業生から何本も電話がかかってきたとか。

「過去の私の授業では、毎年、エネルギーと意思決定の問題について議論してきました。福島原発が爆発すると・・・といった問題もおおざっぱですが、議論していたこともありましたので、今年3月の福島第一原子力発電所の事故のあと、『先生は、今回の問題について、どのように考えるか』と3人ぐらい卒業生から電話かかってきました。

分権化して、直接民主制(住民投票、発議権、リコール)が導入されると、自分たちでエネルギーの問題も決めねばならなくなるので、地域の問題を自分たちで処理しなきゃいけないことになります。そうすると、ゴミがそうですけど、原子力をめぐっても、エネルギーをめぐっても、人々の決定が大きく変わるだろうということです。なぜなら自己決定したことがブーメランのように自分にはね返ってくるからです。例えば、『神奈川県に原子力発電所が1基必要です。どこに建てるか地域で決めてください』って言われたら、原子力に対する認識は、変わらざるを得ないでしょう?今だと、国が全部決めて都心からの遠隔地に大規模で作ってくれていますけど、分権化や直接制が入るとそうはいかなくなるわけですね。こうしたことは今後も重要性を増してくるものと考えます。」

 
034.gif 藤井先生によると、90年代以降、日本の制度の流れは、民主主義の進化の流れのなかで、ボトムアップのプロセスがどうしても必要になってきているといいます。この流れのなかで、日本の社会をどう作っていくかが問われているわけですが、一方で分権化とか自己決定の制度が導入されても、人々は、制度があるのに利用していないという現状に危惧を覚えるそうです。例えば、行政が広く市民から意見を吸い上げる仕組みである「パブリックコメント」について、5年間教えてたった一人しかこの制度を知らなかったといいます。 


◎廃棄物の国際協力も大きなテーマ

025.gif 3番目の専門領域は、廃棄物の国際協力ですね。

「途上国のゴミ問題は、国際協力事業団などの補助金も得ながら、いくつか経験してきました。途上国へは学生を連れて、ここ数年毎年現場に行っています。タイでトータル6年、中国では中央政府から招かれて2年間、その他インドネシア、マーシャル諸島、ベトナムのゴミ問題を見て、現地の関係者と議論をしてきました。今度、マレーシアの廃家電の問題に関与する予定です。途上国のゴミ問題は先進国のそれよりも解決が難しいと考えており、日本の現状を移転するなどという発想はほとんど通用しません。ゴミ問題解決のための議論は、技術的側面だけでなく、制度、社会など広い領域をカバーしなくちゃいけないこともあり、政策全般、社会システム全体を扱うアプローチから、途上国のゴミ問題に取り組むことが重要だと思っています。」


c0223443_13455181.jpg004.gif 「お宝」を見せていただけますか?

「このマーティンのギターです。学生には『これは命の次に大事なものだ』といって、簡単には触らせないようにしています(笑)。下手の横好きですが、時々こっそりと楽しんでいます。大学時代からジャズが好きだったこともあり、60才でジャズ喫茶をやることが長年の夢でした。すでにその歳を過ぎてしまったので、どう実現できるか計画修正しているところです。質の高い音楽を聞かせたり、受験勉強ではない基礎学力のようなものを若い人たちに伝えたり教えたりする、そんな仕事が最後にできればと思っているんです。」


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038.gif それでは、「わらしべ」を交換したいと思います。こちらが鈴木健司先生からの、オパールです。

「すごいな、これ、もらっていいの?ありがとうございます。」



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043.gif 先生の交換物はなんですか。

ポトスです。環境にいいんですよ。室内のホルムアルデヒドなどを浄化する働きがあるんです。」

029.gif 藤井先生、ありがとうございました。


さて、次回、この『ポトス』がどんなものに化けるか、乞うご期待です。
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by bunkyo_warashibe | 2011-11-16 11:34 | 国際学部